弘善会 医療技術部

医療法人 矢木脳神経外科病院  医療技術部 薬剤師 臨床検査/工学科 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士

医療技術部のあゆみ

平成27年度・28年度の素顔

平成29年 3月 放射線被ばくについて

「昨日も別の病院でレントゲン撮影したけど大丈夫ですか」  
「一回のCT検査でどれくらい被ばくしますか」  
  
日々の業務の中で患者様からよくこのような質問を受けます。  
  
そこで今回は、放射線被ばくについて簡単に説明させてもらおうと思います。  
  
まず放射線にはいくつもの種類があります。  
X線、γ線、α線、β線 等。  
CTや一般撮影、放射線治療、PET検査など目的によって使用する放射線は異なります。  
当院での放射線検査で使用しているものはX線のみになります。  
  
放射線被ばくで考えなければならない人体への影響には2種類あります。  
『確定的影響』と『確率的影響』です。  
  
『確定的影響』  
 ・ある一定の線量(しきい値)以上の被ばくで生じる影響  
  白血球の減少(250mSv) 脱毛(3000mSv) 白内障(2000mSv) 皮膚障害(3000mSv)等  
 ・しきい値以下の被ばくでは影響は生じない  
  
『確率的影響』  
 ・被ばく線量に比例して発生確率が増加していく影響  
  がん、遺伝的影響等  
 ・100mSv以下の被ばくでは発生確率が増加していくかは不確実だが影響すると仮定されいている  

  

  

 このように確定的影響、確率的影響の両方から見ても一回の検査での放射線被曝が100mSv以下ならば  
ほぼ問題はないと言えます。  
  
当院の検査での被ばく線量はおおよそ以下のようになっています。

  

 このように放射線検査で受ける被ばく線量はごくわずかになっておりますので  
放射線被ばくによる影響は心配せずに安心して検査を受けていただきたいと思います。  

平成28年 2月 リハビリテーション科 〜高次脳機能障害について〜

 私たち、リハビリテーション科は運動麻痺などで身体に障害を来たし
日常生活が送りにくくなった方が再び生活に戻れるように手助けをする仕事です。
しかし、身体には問題がないのに日常生活がうまく送れない障害があります。
それが高次脳機能障害というものです。
高次機能障害って何?
 脳血管障害・交通事故などの脳外傷、低酸素脳症、脳炎、脳腫瘍などの病気により
脳の認知機能・注意・記憶・感情・行動記憶・学習・思考・判断などに障害が起こります。
その脳の認知機能障害の総称を高次脳機能障害といいます。
一般的なものとして
?注意障害
?半側空間無視
?記憶障害
?遂行機能障害
?社会的行動機能障害 が挙げられます。

?注意障害:注意や集中力が低下するために、継続する力や見つける力
      本来注意を向けるべき対象に集中して取り組めない。
・運動しているとすぐに飽きてしまう
・長時間一つのことに集中できない
・一度に2つ以上の事をしようとすると混乱する
・周囲の状況を判断せず、行動を起こそうとする
・人の話を自分のことと思い発言してしまう

?半側空間無視:片側に注意を向けて見ることができない。
・左側に飛んでくるものに反応できない
・左側にあるものにぶつかる

?記憶障害:気づく力・覚える力・思い出す力の低下
・運動の方法や練習したことが覚えられない
・約束の時間、場所が分からない
・人の名前が覚えられない
・何度も同じ質問を繰り返し質問する
?遂行機能障害:活動の段取りや計画や手順がスムーズにできなくなる
・自分で計画が立てられない
・先を見越すことが難しい
・行き当たりばったりで指示してもらわないと何もできない

?社会的行動障害:人間関係が上手くできなくなる・意欲のコントロールが上手くいかず、状況に適した行動がとれない。
・すぐに怒ったり、笑ったり感情のコントロールができない
・無制限に食べたり、お金を使い切ったり、欲求が抑えられない
・すぐに親や周囲の人に頼る
これらが、脳血管障害・交通事故などの後遺症として残存すると
日常生活に支障をきたすようになります。
脳血管障害の場合、上記の症状が発見のきっかけになることもあります。
頭を強く打ったりした後、徐々に上記の症状が見られたりします。
早期発見により、助かる命が増えたり、今後の人生の過ごし方にも大きく関わってきます。
最近、家族の誰かが「何かおかしいなぁ…」と感じることがありましたら
一度受診をしてみてください。

平成29年 1月 栄養科 〜2017年に大流行!?甘酒のコラム〜


 新年あけましておめでとうございます!
 新年初のコラムを担当します、栄養科の牛尾です。
初コラムということで、今回は2017年に流行ると予想されている健康食材『甘酒』について、特集してみたいと思います!


?甘酒とは
 甘酒は奈良時代から飲まれてきた健康食品で、ブドウ糖・アミノ酸・ビタミンなどの栄養補給ができるので"飲む点滴"ともいわれているそうです。
また、江戸時代には「あま〜い、あま〜い、甘酒〜!」と売り歩く人がいたり、夏の季語として甘酒が登場したりしたそうです。
このように甘酒は、暑い夏を乗り切るための栄養補給ドリンクであったとともに、冬場やひな祭りの時期にほっこりと温まることもできる飲み物でもあります。


?実は!甘酒には大きく分けて2種類あります
  [甘酒]を分類すると、2種類に分けられます。
一つは、日本酒の絞り粕である酒粕をお湯に溶かしてたっぷり砂糖を入れて甘くするもの。
二つ目は、米麹だけを使い、一晩掛けて発酵させ、甘さを出すノンアルコールのもの。
前者はアルコールが含まれるものがありますが、後者の米麹だけを使った甘酒は、アルコールが含まれず未成年でも安心して飲むことが出来ます。


?甘酒の栄養成分
 日本食品標準成分表2010(改定最新版)で、甘酒200gの栄養成分を調べると、下記のようになりました。


甘酒(200g)
エネルギー162kcal 蛋白3.4g 脂質0.2g 食物繊維0.8g B1 0.02g B2 0.06g
ナトリウム 120mg K28mg リン42mg


【まとめ】
 甘酒は暑い夏も寒い冬も摂取しやすく、栄養素面でも蛋白質や電解質、ビタミンB群を程よく含み、 糖質は吸収されやすいブドウ糖であるので、
"飲む点滴"の呼び名に相応しいバランス飲料であると思います。
そのほかにも、麹菌の発酵で作った甘酒では、オリゴ糖や有機酸が含まれるので整腸作用が期待出来そうです!
―以上、2017年に流行ると言われている『甘酒』に関するコラムでした!

  

  

平成28年10月 病院の食事が変わりました!!

 10月より矢木脳神経外科病院の委託給食会社が変更になりました!
会社変更に伴い食事の調理方法が、クックチルから、現地調理に変わります。

どちらの調理方法にもメリットとデメリットがあり、一概にどちらが良いとは言えませんが、大まかに特徴を説明しますと… 

クックチル…加熱調理した食品を短時間に急速冷却してチルド保存し、必要な時に再加熱して提供する方法。企業の給食センターなどで大量に調理し、核施設に提供できるので、安価で安定した品質の食事を提供しやすい。
現地調理…現場で生の食材を調理するため、二回過熱することになるクックチルより、肉や魚の柔らかさや葉物野菜の鮮やかさが良好になりやすい。生の食材を扱うので、過熱や取り扱いが不適切だと食中毒が起きやすい。 
となっております。

現地調理で美味しくなったというご意見を、有難いことに患者様と職員様の両方から多数頂いています。しかし、従来より食中毒の危険が増していることを忘れず、気を引き締めて安全で美味しい食事の提供に努めて参ります。                                 (栄養士一同)

  

  

平成28年 8月〜嚥下障害者と低栄養に関する現状と問題点について〜

医療と健康、そしてリハビリの情報?言語聴覚士というお仕事?
先日、日本臨床脳神経外科学会に「嚥下障害者と低栄養に関する現状と問題点」について発表してきました。
データ不備が多く、発表を躊躇しましたが、まとめてみてよかったなと思っています。
なぜなら、まだまだこの問題については、知られていないことがわかったからです。
脳卒中の急性期における嚥下障害者が必ず直面する問題が「低栄養」です。
そして、この「低栄養」が、回復過程において、悪影響を及ぼすのですが、そのことが多くの現場で浸透しているとは
言い難いのが現実です。入院時にすでに低栄養になっている人が4人に1人
ざっと、私の職場で半年間にわたって調べてみたところ、入院時にすでに低栄養を呈している患者さんの割合は25%強
つまり4人に1人は低栄養の状態で入院されます。在宅よりも施設からの人に多い傾向がありました。
そして、半数以上が入院中に体重減少を認めました(肥満によるカロリー制限をした人は除く) こう聞くと、ひどい病院のように感じるかもしれませんが、多くの文献やデータは同じような状況です。
なぜなら、脳卒中急性期においては、嚥下障害を高率に認め、今まで食べていたものが食べられなくなる。
易疲労性、注意障害などにより、1回の食事に提供されたものを全量食べきる患者さんは少ないのです。
せん妄、昼夜逆転などにより、毎回、食事時間に起きているとは限らず、拒否することも多い。 これらを補うために、点滴や経鼻経管栄養(鼻からチューブを入れて栄養剤を流し込む)などの代替栄養が必要ですが、ほとんどの患者さんは「引き抜いて」しまうし、チューブ挿入に至っては「家族さんの理解が得られにくい」ことが挙げられます。また、安全確保のために、手袋をしたりなど「抑制」が必要になることも多く、人道的見地から病院職員も消極的になってしまう傾向があります。
これらから、「その患者さんが必要とする栄養を、毎日、確実に摂取してもらう」ことが非常に困難なのです。
急性期における低栄養は、長期にわたり予後に影響する 栄養量の確保が困難である一方、病気の治癒過程においては、必要栄養量は増えるのです。
そのため、低栄養がすすみます。入院時の低栄養は肺炎などの合併症を有意に増加させ,入院 1 週間後の低栄養が独立した予後不良因子となっている(脳卒中ガイドライン)など、急性期病院に入院中の問題として指摘されて久しいのですが、論文より急性期を退院したあとも、長期にわたり、影響を及ぼすことがわかってきています。 
これほど、重要な問題ではありますが、さて、どれほど栄養の重要性は認識されているのでしょうか?次回に続きます。

平成28年 7月 リハビリテーション科 〜チーム制になって〜

 私たちリハビリテーション科は、今年度よりチーム制になりました。
チーム制にすることによっての目的は、
?患者様の社会復帰に向けチームアプローチを充実させる。
?地域から必要とされるリハビリテーション科になる。
?セラピストとして知識・技術の向上を目指す。
?病院の1職員としての自覚を持つ。
の4つです。
チームでは月1回のチームごとでの勉強会や、
月2回のチームカンファレンスも開催されていて、
チームでの活動が増えてきました。
  そこで、より良いチーム内の交流を図るために先日、
リハビリテーション科でボーリング大会が行われました。
新体制になったリハビリテーション科を、今年もよろしくお願い致します。

  

  

 

平成28年 2月 リハビリテーション科 〜高次脳機能障害について〜

 私たち、リハビリテーション科は運動麻痺などで身体に障害を来たし
日常生活が送りにくくなった方が再び生活に戻れるように手助けをする仕事です。
しかし、身体には問題がないのに日常生活がうまく送れない障害があります。
それが高次脳機能障害というものです。
高次機能障害って何?
 脳血管障害・交通事故などの脳外傷、低酸素脳症、脳炎、脳腫瘍などの病気により
脳の認知機能・注意・記憶・感情・行動記憶・学習・思考・判断などに障害が起こります。
その脳の認知機能障害の総称を高次脳機能障害といいます。
一般的なものとして
?注意障害
?半側空間無視
?記憶障害
?遂行機能障害
?社会的行動機能障害 が挙げられます。

?注意障害:注意や集中力が低下するために、継続する力や見つける力
      本来注意を向けるべき対象に集中して取り組めない。
・運動しているとすぐに飽きてしまう
・長時間一つのことに集中できない
・一度に2つ以上の事をしようとすると混乱する
・周囲の状況を判断せず、行動を起こそうとする
・人の話を自分のことと思い発言してしまう

?半側空間無視:片側に注意を向けて見ることができない。
・左側に飛んでくるものに反応できない
・左側にあるものにぶつかる

?記憶障害:気づく力・覚える力・思い出す力の低下
・運動の方法や練習したことが覚えられない
・約束の時間、場所が分からない
・人の名前が覚えられない
・何度も同じ質問を繰り返し質問する
?遂行機能障害:活動の段取りや計画や手順がスムーズにできなくなる
・自分で計画が立てられない
・先を見越すことが難しい
・行き当たりばったりで指示してもらわないと何もできない

?社会的行動障害:人間関係が上手くできなくなる・意欲のコントロールが上手くいかず、状況に適した行動がとれない。
・すぐに怒ったり、笑ったり感情のコントロールができない
・無制限に食べたり、お金を使い切ったり、欲求が抑えられない
・すぐに親や周囲の人に頼る
これらが、脳血管障害・交通事故などの後遺症として残存すると
日常生活に支障をきたすようになります。
脳血管障害の場合、上記の症状が発見のきっかけになることもあります。
頭を強く打ったりした後、徐々に上記の症状が見られたりします。
早期発見により、助かる命が増えたり、今後の人生の過ごし方にも大きく関わってきます。
最近、家族の誰かが「何かおかしいなぁ…」と感じることがありましたら
一度受診をしてみてください。

平成28年 1月 検査科 豆知識〜心エコーについて〜

 心臓超音波検査について
    今回は検査科から当院で行っている心臓超音波検査についてです。
   目的
       心臓超音波検査は主に以下の目的があります。
        ・心臓の形態診断(心臓の大きさや壁の厚さ・心臓の弁の変化がないかなど)
        ・心臓の機能診断(心臓や弁の動きの異常がないかなど)
        ・ドップラー:カラードップラーで心臓内の血流の動きを見て、弁膜症や先天性疾患などの評価をした
           り、パルスドップラーや連続波ドップラーで心臓の圧、血流の速度などを測定すること
           ができます。
また、当院は脳神経外科・整形外科の病院ですので、心電図で血栓ができ
                               る原因となる心房細動があった方に対し脳梗塞の原因となる心内血栓を探したり、手術
                               前の方に対し手術に耐えることができる心臓の機能があるかどうかを検査します。

                    長軸断面
   この断面では主に左室の内腔の広さや
   壁の厚さを計測します。また血液の逆
   流がないかなども見ます。  

          短軸断面
 この断面では主に心筋梗塞などによる心臓
 の虚血が原因で起こる壁運動の異常がない
 かを見ます。        

        心尖部四腔断面
この断面では短軸断面と同様に壁運動の異常
がないかどうか、弁に異常がないかなどを見ます。  

平成27年 12月 放射線科から豆知識

 〜CTとMRI〜
 当院の医療画像診断装置には一般撮影、CT、MRI、血管撮影装置などがあります。この中から画像の似ているCTとMRIの違いを、簡単にではありますが紹介します。
 CTとMRIは、放射線を使う検査がCT、超強力な磁場を用いた検査がMRIと、どういったもので撮影しているのか大きく異なります。検査目的に応じてどちらの撮影装置を使用するかを決定します。また、それぞれにメリット、デメリットもあります。
 
 当院でのCTの検査は、脳卒中の出血疑い、骨折の精査などが主な検査の対象となっており、検査時間は2〜3分程で終わることがほとんどです。場合に応じて、撮影した画像で、任意の方向から脳の画像や骨の画像を作れるのが特徴です。また、造影剤という薬を用いて、目的部位の血管を撮影することが可能です。
 対してMRIの検査は、脳卒中の脳梗塞疑い、脊椎のヘルニア・脊柱管狭窄症などが主な検査の対象となっており、検査時間は15〜30分程かかります。MRIの場合は、位置決め画像から任意の撮影方向を決定し、目的部位に対し何種類かの画像を撮影できるのが特徴です。MRIは造影剤という薬を用いず、目的部位の血管を撮影することが可能です。
           
        それぞれのメリットをまとめます。
CT                       MRI
・短時間で撮影可能                 ・被曝しない
・緊急オーダーにすぐに対応可能         ・造影剤なしで血管撮影可能
・撮影後に様々な画像処理が可能   
        
        それぞれのデメリットをまとめます。
CT                       MRI
・放射線被曝をする【妊婦・子供は撮影を考慮】   ・撮影に時間がかかる
・腎機能が悪い人に造影剤が使用できない      ・閉所恐怖症の人は困難
                        
 CT・MRI共に弱いのが、≪動き・金属≫です。動きは画像がブレてしまうので再撮影の対象となり、金属はノイズの原因となります。特にMRI室に金属を持ち込むと、機械自体が超強力な磁石となっているため、一度引っ付いてしまうと、物体が大きければ大きい程、引きはがす事は困難となります。他にも磁気カードを持ち込むと中のデータが消失してしまうので、細心の注意が必要です。
 どちらの装置も体内情報を得るのにとても重要な役割をなしていますが、一つ間違えると、とんでもない事態になりかねないです。これらの画像装置を安全に、かつ診断に役立つ画像を作るのが我々、診療放射線技師の役割でもあります。
 

平成27年 10月 薬剤科から ○○Freeのご時世

 〜Drug Free (非薬物治療)の薦め〜
 夏の暑さはいつのまにか過ごしやすい気候へと移り変わり、院内のポスターにもインフルエンザワクチンの案内が登場する季節になりました。
 典型的なインフルエンザの症状は、発熱(比較的高熱)・頭痛・全身の倦怠感・筋関節痛などが突然現われ、咳・鼻汁などが相前後して続き、約1週間程度で軽快するといわれています。
ワクチンを接種しておくと、罹患しないとも思われている方もありますが、罹った場合も症状が軽くすむというのが的確な効能です。
 A型インフルエンザウイルスは、ウイルスの表面にある糖タンパクを毎年のように変化させることが知られているため、そのシーズン流行する亜型を予測しワクチンを製造していますが、ワクチンとウイルスの抗原性(糖タンパク)の相違が大きいほど感染を受けやすく、発症した時の症状も強くなります。そして、ウイルスが生き延びてしまいます。
 さらに数年から数10年単位のサイクルで突然別の亜型が登場するとも言われており、新たに登場したウイルスに対する抗体は存在しないため、感染は拡大し大流行(パンデミック)となります。
2008年冬、『鳥インフルエンザ』・『新型インフルエンザ』と呼ばれる新しいウイルス型が登場したように、ウイルスとワクチン(宿主免疫システムあるいはヒトの知能?)の攻防戦が繰り広げられています。
 私たち医療従事者は、インフルエンザに罹患されている患者様から伝播し感染してしまうリスクもありますが、罹患していない病院訪問者に伝播してしまう可能性ももっています。
 卵を使って精製されるため(最終的には卵成分はごく微量になりますが)卵アレルギーの方には積極的にお勧めできませんが、また免疫不全など抗体産生が期待できないなど、問診票にあるチェック項目に該当される方以外は、インフルエンザワクチンを接種を検討されてはいかがでしょうか。
 身近に、幼いお子様や高齢者がいらっしゃる方は、特に推奨されている接種対象者となります。
 と、ここまでの話では『インフルエンザワクチン』の薦め、抗インフルエンザ薬なしという意味のDrug freeに過ぎません。
 ウイルスや細菌に感染する時、我々の体内でただ無防備に入り込んでくる宿敵が増殖するのを放置している訳ではありません。代表的な免疫戦士といえば、血液中の白血球やその白血球が生産する成分各種など。
体内の随所で幾重にも感染防御システムが機能しているのですが、『腸内細菌叢』が注目されています。
 ヒトの腸管内には、500〜1000種類、総数100兆個にも及ぶ腸内細菌が共存しています。
それらの細菌群の総称を「腸内細菌叢(そう)」呼びます。ヒトは生まれた時には腸内細菌を持っていません。
まず、母親から腸内細菌を受け継ぎ、その後、食物、免疫、環境などのさまざまな影響を受けながら、徐々にバランスのとれた腸内細菌叢を作り上げていくのだそうです。 研究により、腸内細菌叢のバランスの乱れが、自己免疫疾患、アレルギー疾患、がん、肥満症などのさまざまな疾患の発症や病態に影響を及ぼしていることが分かってきました。
 免疫反応を抑制する細胞が腸内細菌叢のバランスを制御していること、また、一方で、バランスのとれた腸内細菌叢が、腸管における健全な腸管免疫系の形成に有効であることも解ってきています。
 薬剤科、薬剤師というと、薬物治療にばかり目が行きがちですが、例えば、食物繊維や発酵食品を積極的に摂取することなどで『腸内細菌叢』を整え、免疫系を高め、その成果として疾病を予防できれば…Drug freeも夢ではないのかもしれません。  


ちなみに。。。
昨シーズンまでインフルエンザワクチンはA型2種類、B型1種類でしたが今シーズンからA型2種類、B型2種類の
合計4種類のワクチンになります。
■平成27年度インフルエンザワクチン製造株
  A型株
    ・A/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
    ・A/スイス/9715293/2003(NIB-88)(H3N2)
  B型株
    ・B/プーケット/3073/2013(山形系統)
    ・B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統) ■4価ワクチンの導入理由
  近年、インフルエンザの流行は、A(H1N1)pdm09およびA(H3N2)に加えてB型である山形系統とビクトリア系統の混合流行が続いており、 WHOも2013年シーズン(南半球向け)から4価ワクチン向けにB型2系統からそれぞれワクチン株を推奨している。また、米国においては2013/14 シーズンから4価ワクチンが製造承認され、世界の動向は4価ワクチンへと移行してきている。このことから、わが国においても4価ワクチン導入の是非を検討 し(インフルエンザワクチン株選定のための検討会議)、2015-16シーズンよりA/H1N1pdm09、A/H3N2、に加えてB/山形系統およびB /ビクトリア系統の4価ワクチンとした。
 (第10回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会より)

平成27年 9月 栄養科から豆知識

 〜意外と知らない?乳糖不耐症について〜
『牛乳を飲むとお腹がゆるくなる』人がいることは良く知られているかと思います。
この『牛乳を飲むとお腹がゆるくなる』現象は、乳糖を消化できない『乳糖不耐症』によるものです。(*1)
今回は割と身近で余り知られていない『乳糖不耐症』についての豆知識を紹介します。

『乳糖不耐症』とは
乳糖(ラクトース)を分解するラクターゼという酵素が不足することで起きる乳糖の分解障害です。
乳糖は牛乳や乳製品に多く含まれるので、乳糖不耐症の人がそれらのものを摂取すると、分解されない乳糖が腸管内の浸透圧を上げて下痢になったり、腸内細菌が乳糖を分解してガスが発生し、お腹が張ったりと、命に別状はないもののお腹がツラい状態になってしまいます。
乳糖不耐症の人の割合について
産まれたときは母乳に含まれる乳糖を分解する為にほぼ全員が乳糖分解酵素を持っているので、乳糖不耐症は殆どいません。ところが、成長するにつれ乳糖分解酵素が必要なくなり、段々と分解酵素の量が少なくなってきて、成人になると8割近くの人が乳糖を完全には分解しきれなくなるという研究もあります。
ただ不完全ながらもいくらかの乳糖は分解できるので、実際牛乳でお腹を壊すと自覚されている方はおよそ25%ぐらいとのことです。自覚のある乳糖不耐症の方は25%ですが、それでも割と多くの方が牛乳を飲むとお腹が緩くなってしまうようです。

乳糖不耐症の人はどうしたら良いか
先に紹介したように、乳糖不耐症の人にも乳糖分解酵素の多い少ないがあります。
そこでまずは、自分がどれぐらいの乳糖をお腹を壊さずに分解できるかを調べてみると良いかと思います。
牛乳100mlまで大丈夫なのか、牛乳200mlまで大丈夫なのかといった具合です。
例えば、牛乳100mlまでギリギリ大丈夫な乳糖不耐症の方であったとします。
ヨーグルトは乳糖が乳酸菌の働きで牛乳の70%に減るとのことなので、その方は143gぐらいのヨーグルトが食べられる計算になります。また、200mlの牛乳で約250gのカスタードクリームが出来るので、カスタードだと125g程度まで食べることが出来そうです。(*2)
そして最近は乳糖があらかじめ分解されている牛乳も市販されています。ある商品では8割乳糖カットなので、100mlの牛乳が飲める人では500mlまで飲むことが出来ると思われます。
以上、思いのほか乳糖不耐症の人が多いことや、乳糖不耐症の人でも程度に合わせて乳製品を取ることが出来るなど、意外と知らない?乳糖不耐症のについての豆知識をお送りいたしました。
(*1)牛乳アレルギーでも下痢が起きることはありますが、アレルギーでは皮膚炎や蕁麻疹が特徴的です。
(*2)カスタードのレシピにより濃度が異なります。また、乳糖は加熱では分解されません。

平成27年 8月 リハビリテーション科ってこんなところ〜

今回は当院のリハビリテーション科についてご紹介します。   〜特徴〜 ?    理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 間の垣根が無い ?    急性期であっても、3職種共に初期から介入し、じっくりリハビリが出来る ?    月1回、リハビリ科全員で実施するケースカンファレンス   〜紹介〜 ?    当院のリハビリ科は、他病院での経験豊富なスタッフが多く、
多方面からリハビリ立案し実施することが出来ます。
また、新人は多方面からの視点を養うことが出来ます。
リハ科全スタッフは1つの部屋でリハビリを実施するため、
患者様の状態の把握ができます。
?    急性期のリハビリは、毎日忙しく走り回っているイメージがあるかと思います。
当院は92床でリハビリスタッフは27名と充実していますので、
入院早期より3職種が介入出来、患者様とじっくり向き合える時間があります。
?    新人から経験者関係なく、対象患者様について検討会を行います。
発表するだけでなく、いろいろなアドバイスを受け、
今後の目標の検討・リハビリ内容・方向性などをリハビリ科スタッフ全員で討論するのが特徴です。

平成27年 6月 検査科〜豆知識 頚動脈エコーについて〜

 今回は検査科から当院で行っている頚動脈エコー検査についてです。  
 
   目的
       近年高齢化や食生活の欧米化、ストレスなどに伴い、動脈硬化性疾患が増加しています。頚動脈は
       アテローム性動脈硬化の好発部位で、身体の表面に近い部分を走行しており、全身血管の窓として
       動脈硬化の評価に用いられます。
       頚動脈に動脈硬化が見られた場合、その他部位の血管の動脈硬化も進行している可能性があり、虚
       血性の心疾患や脳血管疾患が発生する可能性が高いと考えられます。
       超音波検査は、被爆や痛みがなく無侵襲に検査を行うことが出来ます。  
    測定
       当院での頚動脈エコーの評価ポイントですが、以下の項目を評価しています。
         ・内中膜複合体厚(IMT)
              血管壁の厚さを測ります。正常の場合、表面が滑らかで、厚さが1.0mmを超えません。動脈硬化
              が進行すると、血管壁が肥厚してきます。
         ・血管径
              総頚動脈、内頚動脈の血管径を測定します。加齢により太くなる傾向で、血圧が高くても太くな
              ります。
         ・血流
              総頚動脈、内頚動脈、椎骨動脈の最大流速、最低流速、平均血流速、PI(血管抵抗指数)を測定し
              ます。プラークができて、血管内腔が狭窄すると血流が乱れます。
         ・プラーク評価
              プラークの性状やサイズ。またそれらから血管の狭窄率を算出をします。  

           血管径・血管壁厚さ

            血流速度測定

平成27年 5月 放射線科から豆知識

 〜CT開発はビートルズのおかげ??〜
 CTは、スクリーニング検査、造影剤による血管撮影、骨折の精査等、当院でも様々な撮影が行われており、現代医療に欠かせない撮影装置です。
このCT装置についての豆知識を紹介します。

 1970年代EMI社から最初のCT装置が開発されました。このEMI社に所属していたのがビートルズです。ご存じの通り、ビートルズはその人気と共に膨大な数のレコードを売り上げました。EMI社は、その利益を医療の世界に還元しよう、とその売り上げをCTの研究資金に回したため、現在の原型となるCTが開発されました。
 日本には、EMI社と提携していた東芝(EMI)が1975年に輸入し、その後、東芝メディカルによって国内生産されています。  今では更なる研究が進められ、当時、2枚の画像データを得るのに4分かかっていたのが、現在ではほぼリアルタイムに画像データを得ることができます。 EMI社による研究資金がなければ、CTの開発は10年遅れていたと言われており、その功績から、CT装置は「ビートルズによる最も偉大な遺産」と言われています。上記に上げたように、CTは現代医療に欠かせない撮影装置となっており、その原点にはビートルズが深く関係しています。そう思うと、CTの技術向上の早さと共に、改めてビートルズの偉大さが感じられますね。

平成27年 2月 薬剤科から!豆知識〜〜

 薬剤には様々な剤形があります。それらの紹介を軽くしたいと思います。

「口腔内崩壊錠(Oral Disintegrant)」とは
口腔内に投与すると速やかに唾液で溶ける錠剤で、飲水や咀嚼の必要なく服用できます。また、従来の錠剤と治療効果と作用発現時間が同じである薬剤です。メリットとしては、水分摂取に制限されている方、高齢者、小児等嚥下しにくい方には非常に有用と考えられます。
「舌下錠(sublingual tablet)」とは
舌の下に挿入して、急速に溶かして口腔粘膜から吸収させる薬剤です。代表的な薬剤としてニトロペン(狭心症発作時に使用する薬剤)があり、急速に効果を期待するときに使用します。注意として即効性を期待しているので飲み込まない事がポイントです。
「バッカル錠(buccal tablet)」とは
全身作用を期待し,歯と歯茎の間に挟み,唾液により徐々に薬物を溶解させて,口腔粘膜から吸収させる錠剤です。ポイントとしては、舌下錠と同様に飲み込まないようにする事がポイントです。
「咀嚼錠(チュアブル錠:chewable tablet)」とは
かみ砕き、唾液で溶かして飲む薬剤です。口腔内崩壊錠と同様に水なしで飲めますが、しっかり噛み砕かないと、口腔内で錠剤の形が維持します。
 

平成27年 1月 一口コラムを開始します。まずは栄養科から

懐石料理の色々・・・  「懐石料理」の起源は禅僧の修行
懐石料理の起源は文字通り「懐〔ふところ〕に石を抱く」事からきています。もともと修行中の禅僧の食事は、午前中に一度だけと決められていまし た。そのため当然夜になるとお腹が空き、体温が下がってきます。そこで温めた石を懐に抱いて飢えや寒さをしのいでいたのです。ここから懐石という言葉は、 「わずかながら空腹を満たし、身体を温める質素な食べ物」を意味するようになりました。その後の安土桃山時代に茶道と禅宗が結びつき茶道が確立していきま した。その中で茶道の創始者である千利休が禅料理の精神をさらに追求し茶道に取り入れ、狭い茶室でも簡単に食べることができる懐石料理を完成させました。
 もてなしを体現する厳しい作法
懐石料理には亭主(おもてなしをする人)と客人(おもてなしを受ける人)どちらにも作法があります。

亭主の作法
・四季折々の旬の素材だけで献立を作り、季節感を大切にすると同時に、材料の色や香り、味を最大限に生かします。
・材料の切れ端まで決して粗末に扱ってはいけません。
・温かい料理は温かく、冷たい料理は盛る器まで冷たくして客人に提供するといった心配りを重んじ、料理を運ぶ「間」を大切にします。
・献立の中で海、山、里の幸を重複しないように組み合わせなければなりません。
・食べにくいものには隠し包丁を入れ、骨の多いものはしっかりと取り除いて料理を提供します。
・料理を盛り付ける食器に関してもその取り合わせや組み合わせまでしっかり心配りをします。
客人の作法
・焼魚・・・まるごとの魚は、頭の後ろ背中の方から一つまみずつ食べます。おもて側を食べ終わってもひっくり返さず、そのまま骨を取って下の身を食べます。
・刺身・・・わさびを醤油に溶いてはいけません。わさびは刺身の片側に付けて醤油は反対側につけて食します。
・煮物・・・里芋などの滑りやすいものは、片方の箸を刺してもう一方の箸で挟んで食べます。
・串物・・・串に刺さった料理は、串を持って食べてはいけません。まず串は抜き、箸で適当な大きさに切って食べます。